忘却の彼方

父さんが

リハビリ専門の病院に

転院した。

早速

仕事を終えた後に

お見舞いに行きました。

2階にいると

聞いていたので

2階で

キョロキョロして

父さんを探していると

「おーい!」

という父さんの声が。

昼間に寝ないように

車椅子で起きた状態でいるのだ。

父さんは

とりあえず

病室で横になった。

しかし

衰えたな。

もう蚊の鳴くような声しか出ない。

言葉が出て来なくなった。

父さんが言った。

「もう母さんとは決別だよ」

「一緒に暮らすことは出来ない」

母さんの側からは

別に決別なんて言ってないけど

本人は

母さんにかける負担を

気にしているのかも知れない。

痴呆症?

認知症

父さんの記憶は

かなり曖昧だ。

自分がどこにいるのか

分かっていない。

説明してみるのだが

何の反応も無い。

この50年。

父さんと過ごした時間を

振り返ってみたんだけれど

あまり良い思い出が無いな。

あれは僕が小学生の時の

父の日。

父さんの為に

手紙と絵を描いて

プレゼントしたことがある。

いつもありがとう!

そう言ってプレゼントを渡すと

父さんは黙って涙を流した。

毎日

必死で会社に通って

酒に溺れて

「にいぬま君は仕事しなくていいから!」

「とにかく酒をやめなさい」

と言われて

囲碁部の部室で

朝から定時までひとりで囲碁をしていたという。

給料日には

飲み屋の借金が天引きされて

残されたお金で

母さんは必死で家計をやりくりしていた。

そして晩年は

ただひたすら酒を飲んで

家族に

言葉の暴力をふるっていたよな。

父さんの人生は

楽しい瞬間があったのだろうか?

僕は色々なことが

頭の中を回って

目の前にいる父さんの

愚痴を聞く。

そんな

病院での父子の時間だったよ。

(;_;)

おわーり

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