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北の旅  第75回「かもめ」

 そのまま歩いて線路を越えた。テトラポッドが積んである海岸線まで出た。吹き渡る海風に、かもめが1羽、2羽、舞い翔んでいた。

 海岸線のすぐ近くに平屋建ての簡素な住宅が密集していた。その中を迷路を楽しむようにジグザグに歩いて戻った。むきだしのプロパンガス。玄関先にはプランターの緑。絶えず吹きつける海風のせいだろうか、トタンのフェンスは剥がれかけたペンキの上から容赦なく赤錆びに蝕まれていた。この地区に住む人々の暮らしぶりを垣間見た気がした。

 ゆるやかな坂を上り、小高い場所に出た。後ろを振り返ってみた。垂れこめた雲の下、住宅の屋根が沈うつに低く連なっていた。屋根の向こうには海が鈍く光っている。

 連なる屋根屋根を見て思った。この地区に住む人々の冬の暮らしを想像してみなければならないと。1年の半分は雪に埋もれるであろう、厳しくも温かい、冬の暮らしを。

               つづく