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弾丸ゆるキャン…

 10月からずっとキャンプができずにたまっていた欲求不満を晴らすべく…いつも天気予報をにらみながら、今度こそと思いながらもついつい出損ねる週末が続いていた…。

 そしてまた…金曜日の夕食を終えるとついついお布団の誘惑に負けてしまい…目覚めれば土曜日のお昼前…ああ今週もまた…やらかしてしまったと後悔が始まるのだが…やはり…いつもくじけるのは出かける前の準備が原因であることには、最近嫌でもうすうす気がついてはいた…。

 良くも悪くも慣れてきてどんどん増えてしまった道具類を限られた積載能力の車に押し込むまでの手間暇を思うと…まして家族全員分でも…いつもそれは私の仕事になってしまうわけで…愛車ちゃんとお出かけしたいと思えば…必然的にひとりで行くことになるから…その分少しは荷物も減るだろうと思いながらも…ひとりだからといってもそれなりに必要なものは変わらないから劇的に減らせるわけもなく…、何を減らそうか迷うとまた先送りが始まり…そして愛車ちゃんの積載能力はマニュアルちゃんよりさらに悪いのだから…考えているうちに土曜日が暮れて日曜日になってしまうのが最近の傾向であることは十分に理解していた…。

 さて…この業界は…結構最近にわかに「流行」の兆しがあるらしい…。一昔前に比べれば真冬でもキャンプ場にはそれなりに賑わっていて、ついに「業界漫画」まで出たらしい…という噂に、一応目を通してみるか…と同居人を本屋に走らせた…。最近3巻が出たらしいが…数軒回っても2巻までしか入手できなかったということで、まずはとりあえず読んでみた…。

 …タイトルに似合わず…女子高生が真冬にソロキャンプをしているという過酷な内容のはずだが…久しぶりに読む漫画は…女子高生のキャラの区別もつかないのに…舞台になるキャンプ場はほぼおなじみのところがモデルになっているから…行ったことがあるところもないところも…それなりに訪れたくなるくらいには「面白い」…。

 その後も本屋で3巻は見つからず…ついに禁断の通販で入手して続きを読むが…ともかく…秋から続いているドリフト漫画のアニメの再放送で愛車ちゃんと峠を走りたくなるように…舞台のモデルはそこに実在するのだから…そしてこの漫画は…「ゆるい」というより…所詮キャンプなんて不自由を楽しむもの…という原点を再認識させてくれたのだった…。

 …だって…冒頭女子高生は…うちよりは「富士山の近所」在住とはいえ…自転車で富士山を望む湖畔に乗り込んで来たりするのだから…日頃から荷物が増えたのを反省しつつ…この業界には…バイクで出撃する強者も多いというのに…積載に悩むなんて有り得ない…と…軽く呪縛から解き放たれた…。

 そして土曜日の午後…同居人は実家の用事で朝から出かけて夕方まで帰ってこないし…子供も遊びに行ってしまったから、今からでもひとりでちょっと行ってみようか…。寒かったら車中泊でいいんだし…。この時間から行っても冬の閉鎖期間は無料の精進湖なら入れるはずだし…、朝になったら別のキャンプ場に移動してもいいけど、精進湖の閉鎖中は水道が使えないはずだから洗い物もなし…料理も極力しないで出来合いを買っていけばいいんだから…。

 …久しぶりに愛車ちゃんにマニュアルちゃんから必要な道具を移動して…さらに自宅前から冬は不要のクーラーボックスもなし、いつも家族キャンプに持って行くかなり充実の調味料コンテナもなしで…それでも助手席まで結構埋まってしまったが…ひとりならなんとかなるだろう…。

 そして夕暮れの甲州街道を下っていき…大月直前で沿道の結構新しいコンビニに立ち寄ってまずは軽く空腹を満たしてから、富士みち入ってまもなくの最近出来た道の駅を偵察に寄った…。

 すでに暗くなっていて…例によって道の駅の店舗は夕方で早々に閉店してしまうようで…国道から脇道を少し入ったところにある真新しい道の駅は駐車場の明かりだけで建物は真っ暗であった…。

 トイレはやっているはずと近づいていくと、自動的に電気が点いて、最新式のきれいなトイレを確認だけして…また富士山に向かった…。車中泊でガス欠になっては困るから…一応ちょっと遠回りの行きつけのスタンドで満タンにしようと車外に出ると…さすがに寒さを感じた…この週末はほどほど暖かい予報のはずだったのだが…。

 そしていつものモールのスーパーで…閉店時間直前まで買い物をしてから、おもむろに国道に戻り…精進湖を目指すと…もうすっかり路面は凍結していた…。

 途中の道の駅でまた少し寄り道してみるが…やはりここで車中泊は出来ても…基本車外で火は使えないし…。

 決意してまた凍結した路面を努めてゆっくりと進んでいき、精進湖への脇道に入る…。一昨年の秋以来だが、一度来たことはあるから…ともかく湖畔に降りてみると…結構な数のテントの明かりと、湖岸にもたくさん車が停まっているのが見えて一安心した…。

 湖の向こう側には夜でもシルエットの富士山がくっきりと見えている…。三脚を立てている人も多く、夜空なのか、この富士山なのか…テントのそばでまだ外でたき火をしている人も結構いて、人の気配がするから静まりかえった感じはない…。

 営業期間中は9時以降の車の出入りはなるべくするなという注意書きがあったが…ほぼ0時近いこんな時間でも私以外の車も結構出入りしているようだし…暗い中、岸より少し離れた、隣のテントとも少し離れた場所に車を停めて、ともかく買い込んだお寿司を食べようと椅子や机を取り出して茶道具なども並べ…上下綿入りの防寒着を着込んでからガスランタンに点火して、風はないが反射用に金属製の風よけで囲ってから、さらにガスバーナーも用意する…。これが案外暖かい…。

 カセットガスヒーターも点けようとするが…相変わらず調子が悪く…寒さに強い成分のボンベでもなかなか着火せずに、ボンベのはまりが悪い感じをぐりぐりしてやっと点くようになったが…やはり風には弱く…時折消えてしまうが、なんとか持ちこたえ始めた頃にお湯を沸かして、買い込んできたお寿司をほおばり始めた…。

 見上げると満天の星…雨の心配はないから…寒ささえ我慢できれば…こんな吹きさらし設営も楽しいものだと…改めて漫画の女子高生の椅子と小さなテーブルだけのソロキャン風景を思い出す…。

 来る途中の沿道に設置されていた温度計はマイナス1度だったが…この時は温度計も出さず…ウエットティッシュがしばらくすると凍り付くのを見て…以前奥多摩で流星群観測をした時を思い出す…。

 食べ終わってから…さて…車中泊をするにもこの出してしまった椅子やらテーブルをまたしまうのも面倒だし…と考えるうちに…先日の流星群観察の技を思い出し…、椅子を3つ並べて寝袋も2重にして…毛布を掛けまくれば…外でも寝られたことだし…今回はテントの外側だけ使ってヒーターも荷物も一緒に入れればなんとかなるだろう…と、暗闇の中トランクからテントの袋を取り出し、石ころだらけの地面にシートも引かずに広げてお手軽にワンタッチで立ち上げた…。

 つり下げ式のインナーテントは半分フックを外して奥の方に寄せて壁を厚くしてから、椅子を並べて寝床を作り、テーブルと荷物を中に入れて、一応外側のテントの四隅だけは一番頑丈なペグを打ち込んだが…相変わらず湖畔は堅くて奥まで刺さらなかった…。

 このテントにはスカートがないから…下からのすきま風は防げず、地べたに置いたヒーターは相変わらず風で立ち消えルことが多かったが…案外机の上に置いたガスランタンの熱は天井の低いテントの上の方にはたまるようで、底上げした椅子並べベッドならまずはしばらく暖が取れそうだ…。気休めの一酸化炭素報知器もセットしてから、設営中に落としてポールにはめることが出来る爪が折れてしまったLEDランタンを消すと、後は自動的に点くセンサーライトだけで横になった…。ランタンを消した直後は温度計は2度くらいだったか…、ちょっとでこぼこの寝床だが、慣れて寝付く頃にはもう1時も相当過ぎていた…。

 真夜中にも何度も車の音や人の気配で目が覚めたが…ふと気がつくとテントの中が明るくなって…外からは、そろそろ日の出が近いという会話が聞こえてきた…。

 時計を見ると6時半くらいか…温度はマイナス3.2度…露出している顔はなるほど結構寒いわけだ…。とりあえずトイレに行こうと外に出ると…明るくなった空から日の出前のシルエットの富士山がくっきりと、この湖から特徴的な子持山を手前に見えていた…。

 暗かった前の晩には気がつかなかったが…私がテントを張った場所はトイレへの通路のすぐ脇だったようで…道理で真夜中も人や車の往来が激しかったわけだと納得したが…間違えて通路の真ん中に張らなくてよかった…。その上あたりにたくさん張ってるテントからの車の出口はここだけだったから…うっかり張っていたら真夜中でも起こされてどかされていたに違いない…。

 結局そのまま起きて、車の中からカメラを出したが…バッテリー切れの警告が出て焦った…。取り出して手のひらで暖めてみると復活させてから岸に近づき、他のたくさんの人たちとともに日の出を待った…。この時期は隣の山際から上るようだが…明るくなっておなかなか姿を見せない間も富士山の色はどんどん変わっていく…。

 そうこうしているうちにどこからかヴァイオリンを調弦する音が聞こえてきた…。音楽を聴いている人は多いようだが…調弦や…あれこれ弾き散らしているから録音や放送ではなさそうだ…。

 かすかに聞こえて来る方を、カメラの望遠でのぞいていると、離れた湖岸で弾いている人が見えた…。最初に弾いている人から別の日とが楽器を受け取ってまた弾き始めたが…かなり薄着で相当寒そうだ…。そういえばこの湖畔では…よくすぐ後ろの湖畔の宿で合宿する人などが楽器の練習をしていることがあるという噂があったが…ラッパなどならともかく…弦楽器を弾く人がいるとは驚きである…。

 薄着の人も寒さに耐えられなくなったのかすぐに弾くのをやめてしまったようだが…そろそろ日が昇り初めて、日差しが当たり始めると、凍り付いた地面から湯気が上がり始める…。

 テントに戻ってお茶でもしようかと思ったが…日が当たり始めたテントの中はみるみる暖かくなり…まだ寝たりない私は入口を大きく開けてからまた椅子並べベッドに戻って二度寝を始めた…。

 今度は色の薄いテントから当たる日光で日焼けしそうになりながら…結局10時過ぎまで寝直して、起きる頃にはすっかりぽかぽか陽気になっていた…。

 椅子のベッドを解体して、寝袋類を片付けてからおもむろにお湯を沸かして、菓子パンの朝ご飯を始める頃には、周りではそそくさと撤収が始まっていたが、真夜中にやってきても…夕方までいても無料のこの時期のこのキャンプ場でそれはもったいない…と私はゆっくりすることにしたが…この頃からやはり特有の風が富士山と湖の方から吹き始めて…日差しは暖かくてもこの風は結構冷たく、テントはよく乾くが、富士山側を塞ぐ訳にもいかず、だんだん耐え難くなってきた…。

 その寒風吹きすさぶ中、きれいな富士山を背景に湖岸ではウエディングドレスのカップルが撮影をしているようで…肩からむき出しの新婦の腕が寒そうだと遠目に眺めつつ、それでも昼過ぎまで…カップラーメンを食べたりしながらのんびりはしていたが…周りのテントがほとんどいなくなった頃、潮時かと片付けはじめた…。トイレの行き帰りに、水場で止めてあるはずの水道を使っいる人が見えたから、カップだけを洗いに行ってみたが…死ぬほど冷たい水で…洗剤を流すだけでとてもこすってすすいだりは出来なかった…。

 車の中も整理しながら、積み込みが終わっても午後2時過ぎ…湖畔を後にして、夏に同居人の家族の旅行で立ち寄った道の駅の隣のフードパークに行ってみた…。そのときは曇って見えなかった富士山がずっときれいだが、そのとき寄った地産地消のビュッフェがお値段がいいのでひとりではとても入れない…。同居人にきれいな富士山の写真をメールで送って、電話もしてみた…。この辺も例の漫画の影響もややあったりする…。

 そこでも外のベンチでは風が冷たく…車に戻って早くも帰路につく…。ちょっと遠回りをして農道からいつもの県道に出て、本栖湖やねぐらだった精進湖を見下ろす展望台から車から降りずに写真だけ撮って、前の晩長居したモールにまた立ち寄る…。ほどほどお腹もすいていたから…すっかり行きつけのモールの中の台湾料理屋さんで「孤独のグルメ」ごっこをした…。この日初めて挑戦した酢豚だったが…それでなくともこの店は量が多く…帰ってから相当胸焼けしてしまった…やはり海老の卵炒めにしておけばよかった…。

 満腹のままスーパーでお土産に富士宮焼きそばを買い込んで…モールを出る頃にはやや曇り空になって冷え込んできた…。富士みちにはいる頃には暗くなり…やや眠気があったから、また新しい道の駅に立ち寄り…やはり店は閉まった後の駐車場でしばらく仮眠してから、渋滞もない下道を順調に帰宅すると…同居人と子供はまた実家にいったまま帰っていないようだ…。

 マニュアルちゃんで行ってしまっているから…愛車ちゃんの荷物も移動できない…。でもまあ…こんなに無計画な弾丸キャンプなら…翌週もまた行っちゃえるかも…と、翌週はついにコットなる折りたたみベッドを買い込んでしまったが…、小雪予報に臆して土曜日は家事に徹して我慢した…。

 次は連休だが…同居人はまた実家の用事で出かけると言うし…電源サイトのあるキャンプ場は予約でいっぱいだし…でも、電源のないサイトはまだ空きがあるようだなあ…。私だけなら…洗い場さえお湯が出れば…電源がなくても絶えられる自信は付いた…。

 やはり虫がいなくて氷の心配がない冬キャンプは楽しい…。指示なしでは動かない同居人と子供がいない身軽さも癖になりそう…。ひとりでは大げさかと迷っていた毎日ネット通販で眺めていた薪ストーブは今シーズンも見送ろう…。愛車ちゃんがすすで汚れるのはやっぱり無理だし…。